余命宣告された学生が命をかけて受けたいと願った伝説の講義との触れ込みでベストセラーと
なっております、ジェリーケーガン大学教授の講義録です。
「全て学びの中で、まず死から学べ」とは先師の言葉ですが、久しぶりに重い読書でした。
現在もベストセラー街道まっしぐらなので、ここでネタばれはできませんが、大まかに分ければ
死とは何かを考察し、人は死ぬとどうなるか、死への正しい接し方、残りの寿命、「不死が人を
幸せにしない理由」などが書かれており、最終的には「死が教える、人生の価値の高め方」に
結ばれておりました。
とかく死の話題は、忌み嫌われます、ではなぜこの書が世界的なベストセラーになったのでしょうか
様々な角度から、考えてみました。今まで読んだ死に関する書物は、あらゆる宗教は死に対する
明確なる答えを持っているとし、死んだ後は天国に行くとか極楽浄土に召し抱えられるとか、成仏をすれば、良き世界に、悪道に陥れば地獄に落ちるといった論点が殆どでありました。
若かりし時に読んだ「カルマの法則 五島 勉著作」は死んだ後の世界をあらゆる科学的なデーターで
解き明かしており、一類の希望と驚きに溢れました。
今回の講義はそれまでの理論を全く無視した、ある意味絶望的な解釈が結論づけられ、身も蓋も無いでは無いかと思いましたが、よくよく考えてみると、現代最大の不幸は世界的に自ら命を絶つ人が
後を絶たないと言う事であります。日本の自殺者年齢層は、働き盛りの50代が最も多く、次いで60代、40代、30代の順です。最近は若年層の自殺も増えていて、若年層の自殺率は世界でトップクラスだそうです。しかも、日本の15歳から39歳の死因の第1位が自殺という悲しい結果になっていて、事故死よりも自殺が多い国は日本のみ。なんとも悲劇的な状況と言えます。
世界的に見て自殺の多いランキングでは、第一位がグリーンランド(日照時間が少なく鬱病患者が多いいとの説有り)で韓国が三位、日本は十三位です。

韓国はOECD(先進国クラブ)のなかでは自殺率トップでEU諸国平均の2倍以上の数です。日本よりも韓国の自殺率が高い理由は「強い者こそ正義」という軍隊文化にあり、メンタルに不調があったときに精神科に行くことは弱い自分を認めることになり、抗うつ剤を飲めば気持ちが落ち着くのに不調のまま過ごして自殺するまで追い込まれてしまうのだそうです。

そもそも韓国は日本よりも学歴重視で入った大学によって給料も何倍も変わったり、高卒では結婚の可能性も低くなるため、大学入試に不合格になったり、仕事を解雇されたりすると社会から見放されて絶望的になりやすい環境という説もあります。

最近は、高齢者の自殺も増えていて、その理由は韓国は儒教の教えからもともと家族のつながりを大事にし、介護も家族が行うものという考えがあり、高齢者は子供の負担を軽減するために自殺を選んでしまう傾向があるとのこと。最近韓国で増えてきたのはネットいじめで、何かあるとバッシングしたり、不確実な噂をネットで拡散したり、追いつめてしまうことも…。
いずれにしても自殺が世界的に一番大きな不幸を招いているのは間違いなさそうです。

先日読んだ、スティーブン・キングの「任務の終わり」では無類の殺人鬼が、携帯ゲームを使って
若き人々を自殺に追い込むというホラーストーリーで著者自ら後書きで自殺の多きことを嘆き
相談番号は真実であると書き添えております。

そのように考えるとケーガン博士が、人の死は機械の破壊と同じで魂が救われたり、来世が美しい
世界であるなどと言うのは全くの迷信であると断言しているのも、うなずけます。

かつては、人の死は人生最後の不幸な事でありましたが、この書は死なないことイコール幸福ではない
と教え、自ら死を招く現代人に生きることの素晴らしさを逆説的に説いているのかも知れません。

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