久しぶりにバカボンド全巻、読み返してみました
漫画だと侮るなかれ、この漫画には武術の大切な心構えが描かれています
「強い」とはどういうことか……。
六十余戦無敗だった男「宮本武蔵」を、井上雄彦が圧倒的画力で描く超話題作!
「バカボンド」この漫画が止まって最早五年の歳月が流れた 果たして「巌流島の決闘」は描かれるのだろうか。若い頃の「自分は世界でどれぐらい通用するのか試してみたい」という部分で共感させられたこの作品。

このバガボンドは絵も内容も非常に長けていて面白い。
しかしながら、一筋縄の考えだけでは難しい内容もあり、そして何よりユニークである。
ジャンルは戦国。だけど、そこまで固い内容じゃないから誰でも入り込める。だからこそ、一度のめりこんでしまうととことん理解しようとするので深く深く沈んでいってしまう。

主人公は初めから例外なく強い。常人の域を遥かに超えた剛腕の持ち主。しかし、心と技が欠けている。それを実際に戦場で敗れて思い知る。

そんな壮大なストーリーの序章がその負けたところか始まる。

時は戦国時代、最早、剣の実力よりも合戦の強さが時代を変える歴史の変わり目に武蔵は生まれたこの物語は宮本武蔵という侍の物語であると共に自己のアイデンティティーを模索する悩める青年の物語でもある。関ヶ原以後、「剣」という物は平和の世で意義を失ってしまう。武蔵のように剣に自己を見いだそうとする者にとっては難儀な時代だったでしょう。
いつの時代も青年は自己のアイデンティティーに悩みます。そう見ると武蔵もまた悩み続ける青年であったと言えます。

現代はどうであろう、確かにエンターティメントとしての強さは金になる、まず、その代表例が
ボクシングであろう、昨年度、世界最高の稼ぎを勝ちとったのはフライドメイウェザーだショービジネスとしてのボクシングは、エンターティメントとして完成の域にある。
最高のスポンサー、華麗なる演出、更にはペイパービューを中心とした莫大な利益を生むマスメディア
最強を誇り、その時代の剣聖の名を欲しいままにしながら、最後まで高石な士官が叶わなかった武蔵が
見たらどのように思うのだろう。

省みるに、我々アマチュアスポーツは、そもそもファイトマネーなどでない
自分もできるかぎりの闘いを繰り返して来たけれど、もらったものは、トロフィーと賞状だけ
むしろ、セミナーや講習会でもらった報酬の方が遙かに多かった。
最近久しぶりに逢った元塾生は念願叶って、四十歳にしてプロレスラーになった。
夢が叶うということは、それなりの報酬がついてくるものだが、彼のファイトマネーは
一試合一万円 自分のパーソナルトレーニング料金より少ないのが現実だ。
それでも、命を削って闘いに挑んでいる それは、まさに剣の時代が終わろうとしているにも
関わらず「最強」を目指した武蔵の生き方に似ている気がする。

栄光や報酬を目指して夢を追い続けるプロの生き方を、自分は否定しない。
しかし、何の得にもならず、ヘタをすれば自分が損をしながらも、後継の若者に夢を託す
そういう「頑固親父」が松栄塾には、存在する。

年収何千万円という企業戦士でありながらも、自らにむち打って稽古に臨む宇野師範
身体はボロボロ、腰は入院しなければならないほど壊れ、最近はミットの持ちすぎで肘の関節まで
いかれてしまった鳥羽会長、子供達に背中を見せなければと、厳しい肉体労働のあとでも
身体を引きずって稽古に参加する鈴木会長、この人たちは次元は違っても「武道」を追求する
侍であることは、間違いない。

自分はこういう庶民の中で日本古来の「侍スピリット」を継承する人たちを絶対に顕彰する
と心に堅く誓って、毎日剣をペンに変えている。現代に於ける真剣は言葉であり活字であると信じるからである。

折を見て「バカボンド」における武術論を拙い経験から書き綴って参りたい。
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